2025年4月27日、香港のシャティン競馬場で行われた、『第51回クイーンエリザベス2世C(G1)』に出走したリバティアイランド(牝5歳)がレース中に失速。
そのまま最後の直線で競争を中止したあと、予後不良の診断で安楽死の処置が下りました。
リバティアイランドといえば、牝馬三冠(桜花賞・オークス・秋華賞)を制した、名牝馬です。
そんな名牝馬、リバティアイランドに突如下された安楽死…
非常に悲しい結末となったリバティアイランドですが、なぜ予後不良と診断され、安楽死までしないといけなくなったのでしょうか。
リバティアイランドが安楽死になった理由

リバティアイランドは4月27日に香港で行われた『第51回クイーンエリザベス2世C(G1)』に出走し、レース中止になったあと、予後不良の診断で安楽死を施されることになりました。
原因は、左前脚の『種子骨靭帯の内側外側ともに断裂している状態』とのことでした。
リバティアイランドは競争馬として、もう走ることができなくなったのです。
しかし、安楽死までしなくてもいいのでは?と、思う方も多いのではないでしょうか?
そこには安楽死せざるを得ない理由があったのです。
種子骨靭帯の断裂とは
種子骨靭帯の断裂とは…
内外側の近位種子骨をつないでいる種子骨間靭帯は、球節安定性を維持する結合組織のひとつで、限局性裂傷、部分断裂、靭帯変性、もしくは付着部の骨髄炎または細菌・真菌感染などの病態を呈します。
※獣医ズ ビー アンビシャスより
少し難しい言葉が並ぶので人間に例えると、手のひらと指の付け根にある少し丘になっている部分、ここを支える骨の靭帯が損傷しているということになります。
馬を含め動物は『手』ではなく『脚』となる為、体を支えなければいけない脚の靱帯が痛んでしまうと、かなりの致命傷となってしまいます。
今回のリバティアイランドのケガを人間に例えて言うと、左手中指の第二関節が脱臼しぶらぶらになった状態になっているのです。
それが手ではなく体重を支える脚なので、走るどころか立てなくなってしまうのです。
なぜ安楽死に?
ケガが治るまで待てばよいのでは?と考えてしまうのですが、馬にとって、今回のリバティアイランドのような靱帯損傷はかなりの致命傷。
競争馬のようなとても大きい体をあの細い脚で支えるのは、通常でも大きな負担がかかっています。
それゆえに、靱帯の損傷となってしまえば立つことも出来なくなってしまうのです。
さらにリバティアイランドは球節部亞脱臼も同時に発症しており、相当な重症で治癒への見込みが非常に厳しい状況だったのです。
靱帯は一度断裂してしまうと再発症のリスクも高く、立てない状態が続くと馬は衰弱していく可能性も高いです。
さらに痛がってしまい大きな声を出すなどで、隔離することで、治療費以外の出費も重なります。
様々な要因含めて、リバティアイランドにとって『安楽死』を選択したのでしょう。
競走馬の予後不良とは

今回のリバティアイランドを含め、競走馬でよくレース中にケガをしてしまうと、予後不良という診断が下されることがあります。
この『予後不良』とはどういう状態を指すのでしょうか。
自立が不可能になる
主に脚のケガから、予後不良の診断が下されることが多いのですが、競争馬は体重が400~600キロ近くなります。
そのため脚への負担が多く、単純計算でも1本の脚につき100キロ以上の負担がかかります。
それプラス、騎手を乗せて60キロくらいのスピードで駆け回りますので、脚にかかる負担は相当なものがあります。
そんなガラスの脚ともいわれる競走馬の脚に骨折など何かしらのケガが生じてしまうと競走馬は自立すら、できなくなってしまうのです。
立てない状態が続くと血液の循環や臓器に影響を与えてしまい、衰弱していってしまうのです。
先を見据えても明るい未来がないまま、生かし続けるのも見るに耐えないことから、予後不良と診断され『安楽死』を選ばざるを得なくなってしまうのです。
莫大な治療費がかかる
治療法として、脚の負担を減らすように、プールを使ったり、体を吊って状態を起こすなどの治療もありますが、これも馬にとって負担もかかりますし、莫大な費用が発生します。
また、痛みのせいで大きな鳴き声を出すことで、ほかの馬と生活できなくなり、個別の場所も用意しなければいけません。
ケガの状態がひどい場合、治る可能性も低く、長く生きられる可能性も低くなってしまいます。
治療が長く続けば続くほど、費用の負担がどんどん膨らんでしまいます。
そのため、ケガの状態を獣医さんが見極めて、予後不良と診断した後、『安楽死』への方向に舵をとることが多くなってしまうのです。
まとめ
牝馬三冠のリバティアイランドの『安楽死』にはかなりショックだった方も多かったかと思います。
まだ牝馬で5歳。まだまだ活躍できる歳でもありますし、引退後の繁殖牝馬としても期待が膨らむ名牝馬だっただけに、非常に残念です。
でも、なぜここまで活躍した名馬が『安楽死』?と、疑問に思う方もいたのではないでしょうか。
リバティアイランドのような競走馬の脚のケガは馬の体にとっては、大きな負担となり、立つことすらままならないとなれば衰退の道を歩んでしまうです。
また治療を続けることで莫大な費用も掛かってしまう為、予後不良と診断された競争馬は「安楽死」せざるを得なくなってしまうのです。
ただ安楽死を遂げたあとも、元気な姿は映像とともに引き継がれますので、雄姿はしっかり焼き付けておきたいと思います。
4月27日の第51回クイーンエリザベス2世C・G1(香港、シャティン競馬場・芝2000メートル)で川田将雅騎手が騎乗したリバティアイランド(牝5歳、栗東・中内田充正厩舎、父ドゥラメンテ)は最後の直線で競走を中止した。この日、サンデーサラブレッドクラブは予後不良の診断で安楽死の処置が施されたことが発表された。左前脚の種子骨じん帯の内側と外側を断裂している状態だったという。
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